本記事は、実際の経験を元にした体験談です。読者の皆様の参考となれば幸いです。
皆様、はじめまして。
このサイトに投稿させていただく記念すべき第1稿として、ネットを探しても中々見つけられない「税務調査」に関する体験談をお届けします。
個人事業主や法人として起業された方にとっては、「いつか訪れるかもしれないイベント」なので、予習していただけますと幸いです。
なお今回は、インタビュー形式で進めさせていただきます。
今回は匿名希望での体験談の投稿です。執筆していただき、ありがとうございました。
目次
税務調査体験者へのインタビュー
- 税務調査時のあなたの年齢・事業(開業届出ベースの事業区分もしくは一般的な職業区分)を教えてください。
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年齢:40歳
事業:セミナー講師・古物商
- 調査は個人/法人のどちらを対象としていたか教えてください。
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副業の個人事業に対してです。(本業でサラリーマンもしていますので、確定申告は総合課税です)
- あなたの事業の売上・経費構造を教えてください。
また、個人事業主の方は、家事按分として経費計上している項目もあれば教えてください。※ -
個人事業は副業に付き、
本業(サラリーマン):年収1,000万円
副業(セミナー講師・古物商):売上120万円/年(副業はすべて単発案件)
<経費構造>
- 旅費交通費・図書研究費・接待交際費は実費
- 仕事場・商品置き場として自宅の一部を占有しているため、固定資産税・水道光熱費に関しては、面積比で1/6を計上
- 自動車関係は個人事業と家事按分で50%
- 税務調査依頼が来た際のシチュエーションと、その時の心境を教えてください。
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税務調査依頼(平成29, 30, 31年の3年間分)に対し、令和2年8月1日午後に毎年の確定申告書に記載していた携帯番号へ税務署の女性職員から電話をいただきました。
初めての事だったので、「何か確定申告書に不備がありましたか?」と質問すると、「確定申告書の個人事業収支報告書に関し、経費計上の詳細をお伺いしたいので、総勘定元帳等の計算表と領収書のエビデンスを税務署まで持ってきてください。」とのことでした。
電話をいただいた瞬間は、普段はかかってこない相手だけに、非常に緊張した覚えがあります。
- 当初何年分の決算が調査対象だったのか。そして、調査の過程で調査対象年度が増えたのか等を教えてください。
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平成29, 30, 31年の3年間分
過去10年近く、同様の考え方で経費計上していましたが、調査対象年度は増えませんでした。
- 調査依頼後、どのような対応をしたのか教えてください。
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税務調査は私自身で対応しました。
既に準備してあった売上帳と仕訳帳、領収書等のエビデンスを持って税務署へ出向きました。
- 実際の調査までの具体的な行動と、その内容を教えてください。
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調査依頼日から7日目
税務署職員(男性と女性の計2名)と面談し、経費の仕訳に関する個々のリスニングが行われました。
私自身の決算で問題になっていたのは、個人事業単体で見た場合の収支の悪さです。売上1に対し経費5の割合で赤字計上していました。
個人事業主の確定申告は本業との総合課税であるため、副業で赤字計上した場合、本業と相殺できるメリットがあります。
それを最大限に活用しようと、副業という名目で複数・多額の経費を計上していたのですが、実際の副業との関係性の説明を個々の経費で求められ、「関係性を明確に説明できない物は経費として認められない」ということで、経費の一部を削減されました。
しかし、双方合意の上で、税務署職員が修正申告書を作成してくださったので、その後の手続きはとても楽でした。
- 実際の調査時の税務調査官からの質問を教えてください。また、その時どのように回答したのかも合わせて教えてください。
税理士立会いの場合は、税理士の回答も覚えている範囲で教えてください。 -
個々の経費について、以下の視点で質問されました。
- 用途
- 金額の妥当性
旅費交通費 | 顧客開拓のために遠地へ出向くような案件や、自動車に関係するものは、行先と目的が明確になっていれば、たとえ業績につながらなかったとしても認められました。 |
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セミナールームの費用 | こちらは、集客できた人数に関わらず認められました。 |
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通信費 | 携帯を個人用途とは別に副業用で持っていることを示すことができれば、認められました。 |
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接待交際費の客先人数や役職 | 相手が誰であれ、その交際が副業に関係するかどうか?を問われました。単純な顧客開拓の一環としか説明できないものは認められませんでした。 |
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図書研究費と副業内容との整合性 | 例えば、セミナー内容を考えるために新聞や経済書は認められる反面、現地へ出張するために旅行ガイドを購入した等は認められませんでした。 |
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- 税務調査を通じて、あなたが得た感想を教えてください。
調査に当たり、事前に準備しておいた方が良かったこともあれば教えてください。
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経費計上は、
- 明確に用途を説明できるものに限ること。
- 本業との相殺を意図するなら、やりすぎないこと。
どれくらいなら税務調査の対象にならないか?という明確なガイドラインはありませんが、多くの収入・売上を得ているにも関わらず、複数年にわたり生活が立ち行かなくなるような経費計上をしているように見えてしまうと、数年後に調査対象になる様に思います。
コロナの時のように、単年度だけ大幅赤字というような特殊事例の場合は、説明さえできれば問題ないと考えます。
※例:経営コンサルティング業で、売上はクライアントから毎月固定で支払いがあり、経費は外注費として、資料作成パートナーに都度支払いが発生したり、接待交際費としてクライアントとの会食が存在している。家賃は約40%が作業スペースなので、その分だけ按分して経費計上している。等
税務調査を受けての、皆様へのアドバイス
本業と副業を行っている場合、副業として経費計上ができれば、本業で支払った所得税・住民税の還付を受けることができますが、副業で使ったことを、できる限り合理的に説明できるように準備しておくことが重要だと痛感しました。
今回の体験談が、皆様のお役に立てることを祈っています。