本記事は、実際の経験を元にした体験談です。読者の皆様の参考となれば幸いです。
体験談を投稿してくださったのは、ハンドルネーム:彦左さんです。執筆していただき、ありがとうございました。
遺された不動産を兄弟で相続
妻の祖母が亡くなったときのことです。
義父母とも離れて片田舎で一人暮らししていたその家は先祖伝来のお屋敷で、古民家の指定も受けていたとか。
駅からも遠く、建物も古いとはいえ、土地がかなり広く、相続税は大変だったようです(さすがにそこまで聞いていません)。
遺産分割協議に基づき、義父と義叔父2人の合計3人で相続した……というのはよくある話ですね。
「売ろうと思う」
空き家になった家をそれぞれの家の孫が夏休みの憩いを兼ねて掃除に行くようなことをして3年、義叔父Aが言い出してからが、争いの序章。
資産としてセカンドライフに活用したいと考えていた義叔父B。
そもそも不動産を相続することに乗り気ではなかった義父(X)。
Aは単純に現金が必要になったそうで、Bに「俺の持ち分を買い取ってくれ」というが、面積がそれなりにあるので金額もそれなり。Xも同じ。
何より、買い取ってしまったら翌年からの固定資産税も払うことになるのです。
自分の住んでいる家ならともかく、空き家の固定資産税ほど無意味なものはないでしょう。
持分買取業者の存在
妻経由でそんな話を聞きながら、ふと電車の中で見た広告を思い出しました。
「持ち分買い取ります」という業者のステッカー。
あぁ、こういう時に使うのかぁ、と思って……ひらめきました。
「Aさんがそういうところに売らないように注意したほうがいいよ。お義父さんに伝えて」
不景気が続くなか、不動産を相続しても腹は膨れない、せめて現金化したい、という人は少なくない気もします。
「持分買取業者」といわれる不動産業者が増えてきたのは、当然かもしれません。
でも、それを「商売」にしているというのはどういうことでしょうか。
例えばAがその「持分買取業者」に所有権を売ったとします。
業者は、かといって部分的にしか所有していない物件をいつまでも持っているわけには行かないので、BやXに買い取りを迫るでしょう。それこそ、兄弟でもない間柄ですから、ビジネスライクなハードネゴに。
あるいは、持分があることを前提にBやXに良いように言って賃貸に出すかもしれません。
その時の入居者が何をするかは分かったものでもありませんが、万が一犯罪に使われていたらB・Xは「犯罪者に家を貸した人間」に名前を連ねることになります。
寝覚めが悪いでしょうね。
そんなこんなで、B・Xはいずれにせよ業者から、本来の値段より高く買い取るか、あるいは自分たちの持ち分を本来の値段より安く業者に買い叩かれるか、という未来しかなくなります。
不動産の共同所有者に赤の他人が混じって良いことなどあるわけがありません。
勘が働いたのはたまたまですが、まさにその時、Aは持分買取業者という存在を知り、見積もりをとろうとしていたところだったそうです。
けっきょく、一番乗り気ではなかったXがAの分を買い取り、Bの老後計画に合わせて徐々にBに売っていく、ということで話がついたそうです。
Aはというと、奥さまのご両親が施設に入ることになり、一人息子もとっくに独立しているので、今の家も売って、奥さまのご両親の実家のそばに2DKの家を借りて暮らすそうです。
「不動産を遺されても重荷になるだけだ。よく分かったよ」
Aが妻にぼやいた言葉、とても印象深く記憶に残っています。