本記事は、実際の経験を元にした体験談です。読者の皆様の参考となれば幸いです。
体験談を投稿してくださったのは、ハンドルネーム:彦左さんです。執筆していただき、ありがとうございました。
賃貸契約書、読んだことある?
「男は働いて稼いで家を買って一国一城の主になってこそ一人前!」
と、昭和時代のサラリーマンは本気で思っていたそうです。
一国一城って、昭和でさえナイだろ……と思うものの。
現代においては、「家を買うべきかどうか」という前提さえ議論されています。
買ったところで固定資産税や維持費がかかるし、将来的に手放すのにも経費がかかる。変に固定資産があるために、子どもたちが自由に生きられないかもしれない。
それであれば、自分も子どもたちも賃貸と割り切ったほうがいいかも……
実際、現代において持家6:賃貸4というのが実態です。
「え、持家の人の方が多いの?」
そうですね。でも、年齢別でみると20代で家を買う人は10%程度(昭和50年代は20代の持ち家率が30%だったというから、時代が違いますね)。
そんな、20代にとってはまだ多くの人が賃貸(あるいは実家)暮らしということですが。
賃借物件に住んでいる人!
賃貸借契約って、どこまでちゃんと読んでますか?
契約って、不動産会社から一応説明は聞いたけどさ。
字は小さいし、言葉は難しいし、どうせ“家賃はちゃんと払いましょう”とか常識的なことが書いてあるんでしょ。
全部読まなくてもよくね?
まぁ、気持ちはよく分かるけれども……よくねぇっす。
僕が社会人になって最初に住んだ賃貸アパートの話をしましょう。
当然、当時は賃貸契約書などちゃんと読むわけもなく、不動産屋にいわれる通り敷金・礼金を払って賃貸借契約書にハンコを押しました。
3年住んで引っ越しをすることになったとき、敷金はほとんど返ってこないばかりか、さらに賃料1ヶ月分を払え、と。
え、なんで?
まずは解約予告。
部屋を退去するときは、2ヶ月以上前に書面で大家さんに提出する必要があったのです。それができないときは、2ヶ月分の賃料を払って許してもらう。
僕としては引っ越しまであと1ヶ月は住むつもりだったので、出て行ったあとの1ヶ月分を解約違約金として払わなければならない、ということです。
大家さん側からすれば、空室ができたら新しく募集しなければいけないし、新しい借主が見つかるまで時間かかるだろうから、そのぶんを保証しろということなんだろうけれども……。
次に原状回復。
これは注意していたので、室内でタバコは吸わないし、カレンダー以外は壁に貼らないようにして画びょうもほとんど使っていないし、と思ったけれども、汚れが目立つとか血の跡のような染みがあるとかで、壁紙交換。
さらに水回りもだいぶ汚れているからハウスクリーニングも入れますよ、というのが入って、敷金の戻りは5,000円程度と。
賃貸借契約書に書いてありますからね。これでも良心的なほうですよ
不動産屋の、使いまわしているような同情の笑顔がさらにムカつく。
調べてみたら、やっぱりこの類のトラブルは多いようで、この当時(20年ぐらい前)はまだ「いざとなったら消費者センターに電話」となっていました。
しかたなく電話して聞いたのは、以下の内容。
- 契約書の内容をちゃんと確認していない僕に落ち度がある。
だから、払わなければいけないけれども、交渉するのは可能。 - 普通に暮らしていての経年劣化(古くなったもの)の交換費用は貸主(大家)の負担で、借主(僕)が負担する必要はない。
- タバコの汚れは借主の負担になるケースが多い。
ペットの毛や糞尿の染みがあれば、それも借主負担。 - ハウスクリーニングは本来貸主負担だけど、特約に書いてあったら借主負担。
- 急な退去になって仕方がないということを説明したら、解約違約金は減額してもらえるかもしれない。
- 交渉がんばれ。
頑張れかよ……。
もう一度、不動産屋から出された見積もりや契約書を読み比べて、不動産屋に行きました。
解約違約金
僕:解約予告に必要な期間を認識していなかったのはゴメンナサイですが、両親の体調が悪くなってきていて、万が一の時にすぐに帰れる場所に引っ越す必要が出てきたんです。
不動産:ご両親、千葉市ですよね。今回北千住へ引っ越しって、なんかおかしくないですか?
僕:えと……かかりつけの病院がそっちの方でして。
不動産:千葉から千住へ?
僕:(無理あるな、やっぱり。でも転勤するわけでもないし、結婚するわけでもないし)
原状回復
僕:血の染みってどこですか
不動産:リビングの、ここですね(写真を見せる)
僕:あぁ、なんかあったな。でも、意図的につけたものではないですよ。
不動産:何もしなければつかないですよ、これは。
僕:コーヒーか何かをこぼしたんだとは思いますが。
不動産:血痕でしょう。
僕:(やけに血にこだわるな……)消費者センターに聞いたんですけど、経年劣化分は負担しなくていいんですよね。
不動産:消費者センター? 相談したんですか?
僕:はい。
不動産:そんな大げさな……(笑) なんて言われました?
僕:通常使用で古くなった分についての交換費用は、貸主負担だって。
不動産:そういう考え方もありますけどね……。
僕:(あれ? 弱くなった?)僕が入居した時も新品の壁紙ってわけじゃなかったのだから、今回僕が貼り替え費用を負担するのって、おかしいですよね。
不動産:うーん、まぁ、貼り替えについては大家さんと話をしてみますか。
僕:(お、いけそう)あと、ハウスクリーニング費用なんですけど。
不動産:これはダメですよ。契約に書いてあるから。
僕:見積もりあります?
不動産:見積もりはありません。
僕:水周りだけで3万円って高いな、と思って。
不動産:でもワンルームで3万円は相場ですよ。
僕:じゃぁ終わった後に領収書のコピーをください。
不動産:なんで?
僕:費用負担するとしても、何をするのか、本当にしたのか分からないお金を払うのは、なんか違うでしょう。
不動産:あのね、壁紙を変えないですませるなら、せめて内装の清掃は専門業者にやらせた方がいいと思いますよ。特に、血の跡なんて専用の溶剤を使わないと落ちないんだから。
僕:(だから血にこだわっていたのか……)
不動産屋は大家と相談するというので、僕は家に帰って荷物整理を始めました。
翌日、不動産屋から電話がかかってきて……
不動産:解約違約金は特別に半額でいいそうです。
僕:ありがとうございます。
不動産:あと、壁紙交換はなし。ハウスクリーニングは行いますがその費用を2万円にするということでどうでしょうか。
僕:ずいぶん下げていただきましたね。ありがとうございます。ハウスクリーニングの領収書はどうですか。
不動産:貸主にそこまでお見せする義務はないということで、お断りします。
僕:費用負担しても?
不動産:そこはもう貸主さんの意向なので勘弁してください。
勝利の決め手は…
僕としても気分は「勝利!」だったので、追及はしませんでした。
あとで聞いた話だと、実際にハウスクリーニングするケースは少なく、せいぜい大家が暇なときに自分か家族に掃除をさせる程度だそうです。それでも汚れが目立ってきたら、ちゃんと業者を入れるけれども、それは何年かに1回。
例えば、借主が変わるたびに3万円もらって、3人入れ替わったら9万円。そのへんで1回本当にクリーニングをかけたとしても5~6万円は残ることになるわけで。
何よりも、「消費者センターに電話した」というのが効いたんだろうな、と思います。
ちなみに、今は各都道府県のホームページでも原状回復や敷金・保証金に関する取り決めなどが載っているので、参考にするといいでしょう。