第3章では、控除を用いて「課税前所得」をできるだけ少なくし、多くのお金を手元に残せる節税方法をご紹介していきます。
この記事を書いた人
木村マネーラボ
ファイナンシャルプランナー
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自動車部品メーカーにてブラジル現地法人へ単身赴任する傍ら、「お金の先生」として社会に貢献していく方法を模索中です。
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【主な保有資格】
・ファイナンシャル・プランニング技能士2級
・上級FFA(金融商品フェアアドバイザー)
・日商簿記3級
・知的財産管理技能士3級
・高等学校教諭専修免許(工業)
・TOEIC: 875点(CEFR: C1)
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今回のポイント
- 課税方法:「総合」、「申告分離」、「源泉分離」の違いについて
- 「節税マンション」を理解して有効活用しよう!
1.課税方法:「総合」、「申告分離」、「源泉分離」の違いについて
まずは前章の宿題からご説明します。
所得税の課税方法には3種類あります。
どの所得がいずれに当てはまるのか?前章に細かく区分けしてありますので、改めてご確認ください。
- 「総合」
所得を合算して課税所得を計算する方式です。主な対象は「不動産所得」・「配当所得」・「給与所得」であり、所得税の対象となる所得から分離課税の対象となる所得を除いた合計所得に税金が課せられます。 - 「申告分離」
「配当所得」・「譲渡所得」等の一定の所得に対し、他の所得金額と合計せず分離して税額を計算し、確定申告によりその税額を納めることとなります。 - 「源泉分離」
所得を受け取る前に、他の所得と分離して一定の税率が課せられ、所得税が源泉徴収されます。そのため、確定申告をする必要はありません。主な対象は「利子所得」であり、所得税15.315%(復興特別所得税含む)、住民税5%の計20.315%が源泉徴収されます。
2.「節税マンション」を理解して有効活用しよう!
前章で「15種類の控除」についてご説明しましたが、一般のサラリーパーソンの方が活用できる控除・節税策は、主に以下の9つで、私は「節税マンション」と呼んでいます。
人によって意見はそれぞれと思いますが、簡単に利用出来て、かつ、即効性が高い方法が地上階に近いところにある。とお考えください。まずは地上1階から順に追いかけていく形が良いと思います。
地下は特殊な内容なので、第4章でご説明します。
表.1 節税マンション
地上7階 | 生命保険料控除(生命保険・個人年金保険) |
---|---|
地上6階 | 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo等) |
地上5階 | 寄附金控除(ふるさと納税) |
地上4階 | 医療費控除 |
地上3階 | 社会保険料控除(国民年金の追納) |
地上2階 | 配偶者(特別)控除 |
地上1階 | 扶養控除 |
地下1階 | 譲渡所得と配当所得の損益通算(損出し) |
地下2階 | 住宅ローン減税(税額控除) |
地上1階:扶養控除
サラリーパーソンの方は、毎年調査が行われる「給与所得者の扶養控除等の異動申告」において、自動的に適用される控除です。
扶養にできる条件として、
- 納税者(扶養者となる人)と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が48万円以下である
と定められており、お子さんだけではなく親御さんも対象にできる場合があります。
ただし、年金受給者の所得額は、年齢によって計算方法が細かく区分されていますので、是非とも詳しく調べてみてください。
地上2階:配偶者(特別)控除
配偶者控除とは、収入のない、または、少ない配偶者がいる場合に認められるもので、こちらも「給与所得者の扶養控除等の異動申告」において、自動的に適用される控除です。
節税面のみで考えるならば、配偶者は専業主婦(夫)であることが最強かもしれません。
国民年金保険料や健康保険料の支払いが免除されるメリットは非常に大きいですが、最近は夫婦共働きが主流となっており、こちらの控除を利用できない方も多いです。
地上3階:社会保険料控除(国民年金の追納)
サラリーパーソンの方は、会社にお勤めである限り、自動的に適用される控除ですが、20歳以降に、何かしらの事情で国民年金保険料を納めることができなかった期間があるならば、「追納」を行うことで、その金額分の控除を受けられます。(追納期間は10年間の期限あり)
地上4階:医療費控除
こちらは皆様よくご存知ですよね?
ご自身または生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その医療費が一定額を超える場合は、その医療費の額を基に計算される金額を控除できます。
ただし、医療保険金などで補填される金額は差し引かれますし、医療費控除の対象とならない治療内容や医薬品もありますので、個別に調べる必要がありますが、人生の色々な場面で役立つ控除です。
地上5階:寄附金控除(ふるさと納税)
ふるさと納税自体は2008年に生まれたものですが、最近になってようやく浸透してきたように感じますので、ご存知の方も多いと思います。
- (住んでいる市町村含む)自治体へ寄付を行うことにより、その金額に応じて税金が還付・控除される
- その寄付金に合わせて、返礼品を送ってくれる自治体が多い!
- (寄付できる上限金額はあるものの)実質負担金2,000円で、2,000円以上の返礼品をもらうことができれば、実質節税できたことになる
というものです。
返礼品には実に様々なものがありますが、やっぱり毎日の生活にすぐに使える食料(お米・お肉・乳製品・果物)が良いと思います。
寄付できる上限額は、所得額や扶養により異なりますので、シミュレーションサイトで見積もってみると良いと思います。その「上限額-2,000円」が、あなたが得られる実質節税額です。
地上6階:小規模企業共済等掛金控除(iDeCo等)
こちらは、2024年12月に制度改正が実施され、これまで以上に使いやすくなったと思います。
将来・老後のための資産形成にと、今は新NISAが盛り上がっていますが、もし老後のために積立を実施されているのが明確であるのならば、間違いなくiDeCo利用がお得です。
- 掛金は全額所得控除対象になる
- 運用利益は全て非課税になる
- 受取時にも税制優遇がある
新NISAでは、運用益が出た場合にのみ非課税となりますが、iDeCoの場合は掛金(投資資金)の段階から全て所得控除になる部分が、他にはない大きなメリットです。将来資金の使途を明確に決めている方であれば、迷うことなくこの控除を最大限にお使いください。
地上7階:生命保険料控除(生命保険・個人年金保険)
こちらは、先にご説明した地上1~6階まで全て利用し、かつ、毎年の節税というよりも将来的な相続税対策を考えておられる「真に余力のある方」に使っていただきたい控除です。
生命保険金の相続には、遺産相続時の基礎控除額計算(3,000万円+600万円×法定相続人の数)とは別枠の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が設定されており、相続税がかかるほどの資産をお持ちの方は、この非課税枠の活用を検討されると良いです。
つまりは、「毎月保険料支払いの生命保険」への加入を検討してください。(新契約に基づく生命保険料の控除額は上限4万円ですので、節税効果も微々たるものですが、毎年使えるのが大きいですね)
個人年金保険については、さらに優先度が低く、iDeCo関係の掛金を完全に埋めた後に検討するレベルで十分です。(新契約に基づく個人年金保険料の控除額も上限4万円で同じです)
最後に
いかがだったでしょうか?ご自身に適用できる節税策が色々あることがお分かりいただけたと思いますが、日々の生活に無理のない範囲でできる限りたくさん利用して節税を目指しましょう!
もし、それぞれの控除の具体的な活用方法について、さらなる深掘りをご希望の場合は、是非ともご連絡くださいませ。改めて、個別テーマで記事を書きたいと思います。
第4章では、個人事業主のメリット(事業所得と経費)についてご紹介いたします。