第2章では、「所得税」と「住民税」が徴収されるタイミングと、税額を決定する「課税前所得」がどのような要素で計算されているのか?をご説明しますので、ご自身にはどんな「所得」と「控除」が当てはまるのか?しっかりと勉強してきましょう。
第一章を読んでいない方は、ぜひこちらもご覧ください。
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木村マネーラボ
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今回のポイント
- 「所得税」と「住民税」は、徴収されるタイミングが違う
- 注目すべきは「課税前所得」。この金額を小さくすることを考えて行こう
- 「所得」の種類を理解しよう
- 「控除」の種類を理解しよう
1.「所得税」と「住民税」は、徴収されるタイミングが違う
サラリーパーソンの方は、毎月の給与から徴収されているので普段は意識することはないと思いますが、「徴収されるタイミングが違う」ということは以下の図でご理解ください。
表.1 所得税の徴収タイミング
所得税は、給与から大まかな金額を「先払い」で納めているため、多く納めた分は年末調整で返ってきます。
なお、1年間の途中でご家族内に扶養の増減等があった場合、12月末に追加徴収されることがあります。しかし、もし間に合わなくても、確定申告すれば精算可能です。
表.2 住民税の徴収タイミング
住民税は「後払い」であり、前年の所得をベースに算出します。
算出された金額を今年6月から来年5月にかけて毎月の給与から天引していくのです。
ここで注意すべきなのが会社に①入社した時と②退社した時です。
住民税は後払いであることから、
- 入社した年は、恐らくほとんどの方が住民税の天引きはありません。
- 退社した場合は、翌年に所得の有無に関わらず、支払わなければなりませんので、住民税まで含めて生活防衛資金を準備してください。
転職の場合は、連続で所得を得られる可能性が高いため、それほど心配される必要はありませんが、退職で翌年にガクンと減ってしまう方は要注意です。
2.注目すべきは「課税前所得」。この金額を小さくすることを考えて行こう
さて、ここからは本題である「課税前所得」の計算式をご説明します。
給与(収入)-各種控除=課税前所得
- 売上(収入)-経費=所得
- 所得-各種控除=課税前所得
個人事業主は実費での「経費」が認められますが、サラリーパーソンはそれに代わる「給与所得控除」があります。
3.「所得」の種類を理解しよう
ここでは、「10種類の所得」について理解しましょう。
「所得」には、表.3に示す9種類の所得と、退職所得があります。
退職所得だけは、所得税・住民税が個別で計算される仕組みになっていますので、
ここでは除外します。
表.3 所得の種類
種類 | 内容 | 課税方法 |
---|---|---|
事業所得 | 商業、工業、漁業、農業など 自営業から生ずる所得 | 総合 |
事業規模で行う、株式等を譲渡したことによる所得 先物取引に係る所得 | 申告分離 | |
不動産所得 | 土地や建物、船舶や航空機など 貸付けから生ずる所得 | 総合 |
利子所得 | 国外で支払われる預金等の利子など | 総合 |
特定公社債の利子などの所得 | 申告分離 | |
預貯金の利子などの所得 | 源泉分離 | |
配当所得 | 法人から受ける剰余金の配当 公募株式等証券投資信託の収益の分配などの所得 上場株式等の配当等は申告分離課税を選択したものを除く | 総合 |
上場株式等に係る配当等 公募株式等証券投資信託の収益の分配などで 申告分離課税を選択したものの所得 | 申告分離 | |
特定目的信託(私募のものに限る)の 社債的受益権の収益の分配などの所得 | 源泉分離 | |
給与所得 | 俸給や給料、賃金、賞与、歳費などの所得 | 総合 |
雑所得 | 国民年金、厚生年金、確定給付企業年金、 確定拠出年金、恩給、一定の外国年金などの所得 | |
原稿料、講演料、 シルバー人材センターやシェアリングエコノミーなど 副収入による所得 | ||
生命保険の年金、暗号資産取引による所得など 他の所得に当てはまらない所得 | ||
先物取引に係る所得(FX等) | 申告分離 | |
譲渡所得 | ゴルフ会員権や金地金、機械などを 譲渡したことによる所得 | 総合 |
土地や建物、借地権、株式等を 譲渡したことによる所得 株式等の譲渡については事業所得、雑所得となるものを除く | 申告分離 | |
一時所得 | 生命保険の一時金、 賞金や懸賞当せん金などの所得 (公営ギャンブルの払戻金、宝くじ等) | 総合 |
保険・共済期間が5年以下の一定の 一時払養老保険や一時払損害保険の所得など | 源泉分離 | |
山林所得 | 所有期間が5年を超える山林(立木)を 伐採して譲渡したことなどによる所得 | 申告分離 |
サラリーパーソンの方は、主に「給与所得」
個人事業主の方は、主に「事業所得」や「不動産所得」
年金を受け取られている方は、「雑所得」
のような感じで仕訳けられます。
ちなみに、課税方法の欄に書かれている「総合」、「申告分離」、「源泉分離」とは何か?については、第3章でご説明します。
4.「控除」の種類を理解しよう
ここでは、「15種類の控除」について理解しましょう。
表.4 控除の種類
種類 | 適用されるケース | 控除額 |
---|---|---|
雑損控除 | 災害や盗難、横領による損害 | 以下のいずれか多い方 ・(差引損失額) – (総所得金額等) × 10% ・(差引損失額のうち災害関連支出の金額) – 5万円 |
医療費控除 | 一定額以上の医療費 生計を同じくする配偶者やその他の親族も含まれる | (支払医療費 – 保険金などで補填される金額) – 10万円 所得金額が200万円未満の人は所得金額 × 5% |
社会保険料控除 | 健康保険料や国民年金保険料などの 社会保険料 生計を同じくする配偶者やその他の親族も含まれる | 支払保険料の合計 |
小規模企業共済 等掛金控除 | 小規模企業共済の掛金 | 支払掛金の合計額 |
生命保険料控除 | 生命保険や介護医療保険、 個人年金保険の 支払保険料 | 一定の方法で計算した金額 (最大12万円) |
地震保険料控除 | 地震保険料 | 一定の方法で計算した金額 (最大5万円) |
寄附金控除 | ふるさと納税や 認定NPO法人等に対しての寄附 | 「寄附金支出合計額」と 「総所得金額等 × 40%」 のいずれか少ない方 -2,000円 |
障害者控除 | 納税者や控除対象配偶者、 扶養親族が障害者 | 一人につき、 ・障害者27万円 ・特別障害者40万円 ・同居特別障害者75万円 |
寡婦控除 | その年の12月31日時点で 「ひとり親」に該当しない寡婦 寡夫控除は、2020年度分より、ひとり親控除に変更 | 27万円 |
ひとり親控除 | 納税者がひとり親である場合 ひとり親控除は2020年分の所得税から適用 | 35万円 |
勤労学生控除 | 学校に行きながら働いている場合 ただし、合計所得金額が75万円以下 | 27万円 |
配偶者控除 | 配偶者の合計所得が48万円以下 給与のみの場合は給与収入が103万円以下 | ・一般控除対象配偶者は最大38万円 ・老人控除対象配偶者は最大48万円 (控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上) |
配偶者特別控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、 配偶者の合計所得が48万円超133万円以下 | 配偶者の所得金額によって 最大48万円 |
扶養控除 | 16歳以上の子どもや両親などを扶養している | ・一般控除対象扶養親族は38万円 ・特定扶養親族は63万円 (扶養親族が19歳以上23歳未満) ・老人扶養親族は最大58万円 |
基礎控除 | 全ての人に適用される | 所得金額によって最大48万円 |
これをご覧になって、「実に色々な控除があるのだな」と驚かれたかもしれませんが、ご自身で対象となる控除であればどれでも適用できますので、この控除を漏らさず申告することがポイントです。
最後に
いかがだったでしょうか?課税前所得の最小化≒節税のためには、この控除を最大限にできるように組み合わせていく必要があります。
第3章からさらに深く勉強して行きましょう。